春秋左氏伝〈下〉 (岩波文庫)

春秋左氏伝は、中国・春秋時代の魯の国の王様の列伝である。下巻は、昭公、定公と哀公。曰く・・・先王が刑法を制定しなかったのは、法を楯に争う心を民が持つのを心配したから。法律があると、民はお上を敬わなくなる。条文を根拠にしてうまくやろうと考え、治めきれなくなるだろう。法など無用である。争う根拠を民が知るようになれば、礼などかなぐり棄てて条文を引き、一字一句まで争うだろう（叔向）。徳を植え付けるなら丁寧に、害を除くなら根こそぎに（伍員）。などなど。春秋左氏伝は、儒学古典のひとつとして扱われている。易、書、詩、礼、春秋の五経のうち、春秋左氏伝は春秋の「伝（経書に対する解説）」であり、公羊伝、穀梁伝とともに春秋三伝とよばれる。春秋三伝のうち、どれが最も由緒正しく、かつ、春秋に筆削を加えたと言われる孔子の真意を伝えているかというのは議論があるところ。津田左右吉は、左伝は「史記」に基づく造作（でっちあげ）であるととらえている。もし、左伝の内容が全部虚偽だとすると、春秋時代の歴史はほとんど空白と化してしまうという。